どもども! さぅです。
今日は、無益情報を垂れ流していこうと思うよ。
自動車セールス時代の話。
その日は、朝10時に新車の納車。
そのお客様にはセールで僕がムリを言って購入を決めていただいた。
最高の仕事をしなければ失礼というもの。
唯一天気だけが心配だったけど、約束の30分前に雨がやむ奇跡。これなら手洗い洗車しても間に合う! ついてるぞ!!!
最高の状態でお客様を出迎えることが出来そうだ。
高圧洗浄機で水を流し、シャンプーをかけてあとは拭き取るだけ。

拭き残しがないように、背伸びしたりしゃがんだりしながら車の隅々までしっかりふき取る。
しかしこれがよくなかった。
パンッ。

自分の近くで鳴った乾いた音。
まさか新車に何か当たった!??
冷や汗をかきながら慌てて車のボディを見てみるが、どこにも傷一つない。ほっと胸をなでおろす。
気のせい・・だったのかな?
不思議に思いながら立ち上がる。
なんだろう。この尻付近の異常な開放感は・・・。
綺麗にズボンの尻部分が裂けていた。
おそるおそる被害範囲を確認。
裂け目は15㎝を優に越えていた。
パンツが完全にこんにちはしてる。もうズボンとしての機能をまったく果たしていない。
え?
よりによって今!!?
納車の直前も直前。タイミングは最悪。
腕時計を確認すると時計の針は「09:55」を指していた。
与えられたタイムリミットはあと5分。
脳内BGMは大事MANブラザーズバンド。
どうしよう。どどどどうしよう。
もう脳は軽いパニック状態!
パンツ丸出しで納車なんて前代未聞。ディーラー界の伝説に残る。
落ち着け! 落ち着くんだ僕・・・!
とりあえず深呼吸して冷静にいこう。
どうする? 近隣の紳士服店に駆け込むか?
いや、この状態でお店に行きたくない。
レジが並んでいたら、後ろに並んだ何の罪も無い人々にパンツをお披露目することになる。
というかそもそも買いに行く時間ねぇよ!
いっそのことお客様にネタとしてカミングアウトしてしまうか・・・?
いまやそれがベストな選択肢に感じる。
しかしそこで僕の脳裏に新人研修の一場面がフラッシュバックした。

その日に水を差すようなことは絶対するなよ!
そうだ・・・。納車はお客様のもの。
このままではお客様にとって今日という日が「新車を受け取った日」から「パンツ丸出しの営業マンから新車を受け取った日」になってしまう。
お客様には新車のことだけ考えてほしい。
一番気分が高揚する納車を僕の尻事情で汚すなんて許されない。
ましてや今日は最高の仕事をする。そう決めてお客様にプレゼントまで用意したじゃないか。
(逃げちゃダメだ・・逃げちゃダメだ・・逃げちゃダメだ・・逃げちゃダメだ・・・!)
そう思った僕は拭き上げを完了させ、デスクに駆けた。

もちろん自動車販売会社にソーイングセットなどない。
何か使えるものはないか、デスクをガタゴト探る。
も、もうこれしかない!!!
そう思った結果。
ホッチキスで乱れ打ちした。
多くは望まない。納車の間だけバレなければそれでいい。
欲を言えばトイレでズボンを脱いで落ち着いて作業したかったけど、いつご来店されてもおかしくない時間だったから履いたままやった。
脳内BGMは大事MANブラザーズバンドのあのメロディー。
負けないこと! 投げ出さないこと! 逃げ出さないこと! 穴をふさぐこと。
ズボンが駄目になりそうな時それが一番大事~♪
ホッチキスのせいで座ると尻部分がチクチクするけど、贅沢なことは言えない。
ありがとう大事MANブラザーズバンド! ありがとうホッチキス!
もう君たちなしの生活は考えられない。
Yes I Can。
そして約束の10時。
時間通りにお客様がご来店されました。
僕に残されたミッションはただ一つ。
「お客様にバレず、納車をやり遂げること。」
背中の傷は剣士の恥。ズボンの穴は社会人の恥。
体の正面以外決して見せない接客を心がける。
なるべく自然に。念のため体の動きも最小限にとどめて尻部分を刺激しないように最大の配慮を配る僕。
そんな努力の甲斐もあってか、始まってしまえば恐れていたほどのことはなかった。
納車はつつがなく進行していき、気づけば新車説明も終盤。
ポジションはお客様の一歩後ろをキープ。


ちょうどこの辺りに・・・。
パァン。


裂けるにしてもまさか目の前でとは。
そのあとお客様めちゃくちゃ笑われた。
逆に救われる思いがした夏の思い出。
みなさんに一つだけアドバイスがある。
スーツが破れてホッチキスで応急処置をした場合、屈む動作は極力控えよう。
以上。クソ役に立たない情報をお届けしました。
それではまたっ! See You Again!